債務名義の意味と債務回収に必要な手続きとは?
2024/04/06
相手方に対する債権を有しているけれども相手方が任意に支払ってくれない場合、強制執行による債権回収を検討しなければなりませんが、強制執行を行うためには債務名義が必要となります。今回は、債務名義の意味と、債務回収に必要な手続きについてご紹介します。
目次
債務名義とは何か?
債務名義とは、強制執行を申し立てる際に必要となる文書であり、債務名義に該当する文書は民事執行法22条に定めてあります。ただ、条文の文言を見ても、見慣れない、聞きなれない言葉ばかりでイメージしにくいかと思われます。そこで、大雑把ではありますが裁判所や公証役場等の公共機関にて債権があることを確認してもらった文書とイメージいただければ分かりやすいかと思います。代表的なものとしては、確定した判決書、和解調書、支払督促(仮執行宣言付)や公正証書(執行認諾文言付)などがあります。これらのいずれかの文書を取得することで、強制執行の手続に進むことができます。そのため、債務名義の取得は、債権回収の登竜門といえるでしょう。
債務名義の取得方法
債務名義は、強制執行の手続きに欠かすことのできない書面です。そのため、如何にして債務名義を取得するのかは債権回収における1つのポイントと言えます。支払督促(仮執行宣言付)、調停または訴訟を申し立てるのか、公正証書(強制執行認諾文言付)の作成を目指すのかは、債権の内容に関する争いの有無、債務者に協力してもらえるのか、債務名義にかけることのできる時間や費用との兼ね合いなどから、総合的に判断する必要があります。ただ、多くの案件は、債権回収の問題が生じている時点では既に相手方の協力を得ることが困難であったり、債権の有無・内容に争いが生じていることが多いため、最終的には訴訟提起を行い認容判決(いわゆる「勝訴判決」)を得る流れとなります。
訴訟提起には債務者の現住所を把握しておくことが重要
債務者が金銭の支払いを滞った場合、債権者は、まずは請求書や催告書を送付して支払いを求めるでしょう。それでも債務者が支払わない場合に法的手続を検討することになります。そして、多くの方は、訴訟という未知なる領域に頭を悩ませることになります。では、訴訟提起のためには、訴状などの書面や証拠を準備する他、どのようなことに注意が必要でしょうか。
まず、訴訟は、原告が裁判所へ訴状を提出し、裁判所より被告(債務者)へ訴状を送達するところから始まります。そのため、相手方の本名はもちろんのこと、現住所または就業場所を把握していることが重要となります。
この点について、一般の方からすれば、相手方の本名や住所も知らない人と関わりを持ったり、ましてや金銭問題に発展することは少なく、把握していて当たり前と思われるかもしれません。しかし、実際は、債権回収の問題が発生するまでには時間が経過しており、その間に相手方が急に引っ越や仕事を辞めてしまい居場所が分からなくなっている場合がある他、SNSにより容易に顔も知らない相手方と知り合うことができるようになったため、当初から本名や住所も知らない状態で相手方との関係を継続しているようなことも珍しくはありません。そのため、いざ問題が生じて訴訟を起こそうと思っても、身動きが取れないで悩んでおられる方は非常に多いです。
しかし、相手方の現住所が不明な場合であっても諦めるのは早いです。弁護士は、債務者の住民票の調査や電話番号から相手方の住所を特定する調査を行えます。また、調査により、相手方の現住所が特定できない場合であっても「公示送達」の方法により訴訟手続を進めることも可能です。これらは、一般の方では難しい対応となるため、専門家である弁護士へご相談されることをお勧めします。
証拠の重要性
無事、訴状を被告(債務者)へ送ることができても裁判官に請求を認めてもらえなければ意味はありませんが、裁判官に請求を認めてもらうためには主張(言い分)のみでなく「証拠」が必要となります。証拠には、簡単に言えば契約書のような正に請求している事実があったことを基礎づける「強い証拠」から、LINE上の何気ないやり取りのように請求している事実をあまり基礎づけることができない「弱い証拠」まで様々なものがあります。弁護士は、過去の経験や専門的な知見から、どのような証拠が必要であるか、一見すると弱そうな証拠であっても、複数の証拠を合わせることで強い証拠に構成させたり、請求原因が複数考えられる際には、よりご依頼者様の利益になる方を選択するなど戦略的に主張を組み立てることもできます。そのため、強い証拠をお持ちでない方ほど、より弁護士に頼られた方が良い結果になるのではないでしょうか。
自分では訴訟対応が難しいと感じたら迷わず弁護士へ相談
債務者が支払いを数か月に及び滞っているケースにおいて、その後に資力を取り戻し全額を返済してきたケースを当職は見たことがなく、ほとんどは時間稼ぎに走り破産や民事再生の手続を開始したとの連絡を受けるか、引っ越しや転職を行い債権者の前から消えるケースが多いと感じています。
お一人でお悩みの方の中には訴訟しか道が残っていないと理解されていながら訴訟への躊躇いと敷居の高さを感じておられる方が多くおられるように思います。おそらく、それは訴訟になった際の流れを具体的にイメージできなかったり、証拠の価値について正確に把握できていないからではないかと思います。
ここまで説明してきたように、債務者が任意に支払わない場合には、基本的には訴訟提起を行い「債務名義」を取得し、その後に強制執行を行う形でしか債権を回収できる可能性は生じません。また、当職の経験上、時間の経過は、相手方に逃げる時間を与えたり、時効の問題を生じさせるなど債権者に有利に働くことはありません。そのため、お一人で悩まれるのであればまずは弁護士へご相談されることをお勧めまします。
弊所では、これまでに売掛金・貸金の回収から投資詐欺?・恋愛詐欺?といった債権回収まで幅広い債権回収の経験を活かし、協議・訴訟対応から、相手方の財産の調査、強制執行まで一貫した法サービスを提供しております。弊所では、初回無料相談を行っておりますので、債権回収でお悩みの方はお一人で悩まれず、まずはお気軽に弊所までご相談ください。