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最高裁令和8年判決にみる不貞慰謝料における過失の考え方

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不貞慰謝料に関する最高裁令和8年6月5日判決(令和7年(受)第933号 損害賠償請求事件)について

不貞慰謝料に関する最高裁令和8年6月5日判決(令和7年(受)第933号 損害賠償請求事件)について

2026/08/26

【最高裁令和8年6月5日判決(令和7年(受)第933号 損害賠償請求事件)について】

 

今回は、不貞慰謝料に関して、令和8年6月5日に新たな判例(最高裁判所の判断)が出ましたので、これについて解説を行います。

 

1 前提知識について

まず、大前提の知識として、不貞慰謝料請求は民法上の不法行為責任を追及していることになりますが、不貞行為に及んだ者にこの不法行為責任が認められるのは、不倫相手との性交渉が「不貞行為に当たる」と認識していたこと(故意)または少し注意をすれば「不貞行為に当たると認識できたはずである」という不注意(過失)のいずれかが認められる必要があります。本判例は、不貞行為における「故意」「過失」の問題、特に「過失」の問題について、取り上げたものとなります。

 

2 原審の判断について

次に、原審の判断を分かりやすく説明します。原審は、不貞行為を行った者について、①不倫相手から離婚したとの報告を受けていた可能性は相当程度あるとして、不貞行為に当たるとの「故意」があるとまでは認められないと判断しましたが、他方で②不貞行為に及ぶ際に不倫相手が離婚したとか婚姻関係が既に破綻しているなどと虚言を弄することは一般的に知られているため、これを鵜呑みにするのは注意が足りないものといわざるを得ないと述べ、不倫相手が離婚したと信じたことについて相当の理由はあったとはいえないとして「過失」を認めました。そのため、一部認容判決(慰謝料の支払いを一部認める判決)を言渡しました。

 

3 令和8年6月5日の最高裁判所の判断について

原審に対して、最高裁判所は「上告人においてAが離婚したと信じたことについて相当の理由があったか否かを検討するにとどまり、上告人において婚姻関係が破綻していたと信じ、かつ、そう信ずるについて相当の理由があったか否かを検討することなく直ちに上告人に過失があるとした原審の判断には、過失に関する法令の解釈適用を誤った違法があるというべきである。」と判断しました。

最高裁判所がこのような判断を行ったのは、本件では不貞行為を行った者が単に不倫相手から離婚したと聞き及んでいたというにとどまらず、不倫相手から不倫相手が離婚届けへ署名等している物を見せられていたり、不倫された配偶者(慰謝料の請求者)と不倫した配偶者(不倫相手)との間で家計を別にする提案やお互いのプライバシーに干渉しないことを提案する内容の電子メールを確認していたりしていたことを踏まえ、「婚姻関係が既に破綻していると信じ、かつ、そう信ずるについて相当の理由があったとみる余地がある。そうすると、上告人において、Aが被上告人と離婚したと信ずるについて相当の理由があったとはいえないからといって、それだけで直ちにいわゆる不貞慰謝料の請求を認めるために必要な要素である被上告人の婚姻共同生活の平和の維持に係る権利利益を侵害したことについての過失があるということはできない。」と考えたからです。

 

4 当職の見解について

たしかに、不倫相手から離婚したと聞いていたに止まらず、不倫相手のみとはいえ離婚届けに署名している物を確認していたり、夫婦間の生計は別、プライバシーにも干渉しない等という電子メールを確認していたのであれば、夫婦関係は完全に破綻していると考えても無理もないことかと思われます。特に不倫された配偶者(請求者)自身が離婚へ向けた動きをしていることが伺えるものを確認していることは大きいように思います。そのため、今後、請求棄却の判断が出る可能性は十分に考えらます。

※現時点では、最高裁判所が原審に差し戻しただけであり、原審がこれらの事情を踏まえて不倫を行った者の無過失を認め請求棄却の判断を行っているわけでありませんので、ご注意ください。

 

なお、当職としては、本判例は裁判所が新たな判断枠組みを示したというものではなく、これまでも争点として上がることの多かった点について、当事者(代理人弁護士を含む)及び裁判所(裁判官)に対して、主張の枠組みを精査した上で判断を行うようにという注意喚起を行ったに過ぎないものと捉えています。

最後に、尾島明裁判官の補足意見は、不貞慰謝料請求における問題点について分かりやすく整理されているので、一読してみてください。

以上

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